Tuesday, March 1, 2011

映画に泣く

夫の友人が映画上映会をするからと誘ってくれた。我が家にはテレビはない。エリックの見てきた映像といえば、You Tubeのネコ画像(ネコが動く映像を見るのが好き・・・)と、最近見せた「にほんごであそぼ」くらい。エリックの目にハリウッド映画はどう映るのだろうか。

ちょっと心配ではあったけれど、夫のよき友人だし、Socializeだと思って行くことにした。

映画が始まってからずっと半時間ほど背筋まっすぐで見ていたエリック。車が事故にあうシーンでは、ひょっとして刺激が強いのでは?と思ったけれど、夫のことばに「だいじょうぶ」と答えていた。しかし、もうしばらくして、今度は2人の男性が大きな声で言い争う場面(別に言い争っていたわけではなく、1人が片方に「ほら、それがリアリティだよ。どうして君には見えないんだ?」といった感じで諭してた)になると、どうしようもないくらい泣き出した。

すぐに部屋から連れ出してなぐさめてあげた。
泣いた理由を聞いてみると、最初は「わかんない」と言ってたけれど、しばらくすると、「エリちゃん、おっきな声を出す人はいやだよ」と言っていた。そういえば、エリックはこれまであんなに大きな声を張り上げて言い争っている人を見たことがないんだということに気付いた。

でも、それだけなんだろうか。車が炎上するような事故だって見たことないのに、車の場面では大丈夫だった。ひょっとすると人間の激しい感情の方が、エリックの心にはどうしようもなく恐ろしいものに思えたのかもしれない。

思えば、ハリウッド映画ってのはとことん感情的だ。感情が激しければ激しいほど売れるし、私たちもそういうものを長年見るうちに、もっともっと!とさらに感情的なものを求めるようになっている。淡々と日々が過ぎていくような映画は退屈だというのが大半の人たちの感想ではなかろうか。でも、それはあくまで大人の期待で、とくにテレビを見てこなかったエリックにはあまりにも異質なものだったに違いない。そのことに後になって気付いた。

今回、この件では非常に反省した。と同時に、子どもにどんなものを与えたいかを私自身、自らに問いただすきっかけにもなった。子どもは大人のミニチュアではない、ということに改めて気付いたことは、私にとって大きな学びであったことは間違いない。

3 comments:

  1. 我が家の子供など、テレビも映画もそれなりに見ていますが、やっぱり、人間の負の感情が表現されるものは極端に嫌います。大人同士が大声で怒鳴り合ったりするのはもちろん、アニメでも子どもが怪我をして泣いていたり、失敗をして大人に諭されて泣いたり、そんなシーンを見ると3、4歳のころには一緒に泣いていました。(7歳にもなると一緒には泣かないけれど、とてもつらそうな顔をして見ている。)
    子どもが最も過敏に反応するのは、「人間の感情の起伏」であり、だからこそそばにいる大人たちは、できるだけ真摯な気持ちで自分の感情を子どもに見せてやらないといけないのでは…と思います。
    テレビや映画は見せなければ済むけれども、いつもそばにいる大人が自分の感情のままに子どもに接したとすると、その子が受けるマイナスの影響は計り知れないような気がします。
    これが激しく表れたものが、いわゆる虐待であり、そう思うと、このトピックは深いものを含んでいますね。

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  2. うちの子どもはテレビも映画もそれなりに見ているけど、やっぱり、人間の負の感情を見るのはとても嫌がる。例えばそれがアニメの1シーン、子どもが怪我をして泣いたりとか、失敗をして大人に諭されながら泣いたりとか、そんなことでも3、4歳の頃には一緒に泣いていた。(さすがに7歳になった今は、一緒に泣きはしないけど、やっぱり顔をしかめて見ている。)
    子どもにとっては「他人の感情の起伏」は影響の大きいもので、まあ、それがテレビとか映画とかなら「制限」も出来るけど、実は一番大切なのは周囲の大人、特に親がどう自分の感情を子どもに見せるか、と言うことなんじゃないかと思う。
    この問題は深刻になると「虐待」に関係してくるわけで、ただでさえ恐怖の対象となる「怒り」などの負の感情を自分の心の拠りどころである親から常に向け続けられたとなると心的外傷は計り知れない…そんなことを読みながら改めて考えました。

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  3. 考えさせられるコメントです。虐待のことには思いが至らなかったけれど、確かに延長線上にあるのはそれですね。このコメントをきっかけに考えさせられたことがあります。子どもは時間をかけて人間にはさまざまな感情があることを知っていくものだけれど、その速度っていうのはかなりゆっくりなんじゃないだろうか。今、4歳になったばかりのエリックは、動物や木、石や花などに感情移入することがあって、たとえば雨が降ったときには木に傘をさしたりするのだけれど、これって私も同じような感じだったのを覚えています。それも小学生ごろだったかも。自分と外のものを切り離して考えるためには長い時間がかかるのだと思います。「感情の起伏」を激しく描いたハリウッド映画やマンガなどを続けて見ていると、その過程を自然の速度にまかせるのではなく、急がせてしまうのではないでしょうか。その結果、失われるものも多いと私には思われます。

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