バイリンガルであることの利点は、欠点に比べるとはるかに多い。
「バイリンガルの利点」というと、簡単に思い浮かぶのは、
より多くの人と友達になれる、
教育や就職の幅が広がる、
その結果、経済的なメリットがある・・・
などだろう。
しかし、それ以上にすばらしい利点がある、ということを、バイリンガリズムに関する本を読むうちに知った。
マギル大学(モントリオール)のFred Geneseeの研究によれば、モノリンガル(一言語話者)に比べると、二言語を流暢に操る子どもたちは・・・、
・ 問題解決能力
・ より自由な発想力や想像力
・ 他者に対する寛容な態度
・・・という特長をもっていることが多いという。
Colin Bakerの本のなかに、そういえばその理由が書かれていた。彼が言うには、英語のKitchenとフランス語のCuisineはともに同じ名称をさす言葉だが、ふたつの単語にはわずかな意味の違いがある。Kitchenは料理をする場所、Cuisineはそれから広がって想像力を発揮する場所、といったより広い意義が加わっているらしい。そして、これらふたつの言葉を知っているバイリンガル話者は、モノリンガルに比べると、単語とそれが指す意味のあいだにはより柔軟な関連性があることを本能的に知っているため、固定観念や概念にしばられたりする傾向が少なく、より柔軟な考え方ができるということだ。
これを読んで思ったのは、言語は明らかに文化の一部というか文化を明瞭に反映しているものだということである。
私の個人的経験から言えば、日本語での論文の書き方と、英語での書き方の違いを知ったとき、日本文化と英語圏文化の根本的違いが理解できたような気がしたものだ(英語では、序・本論・結論をしっかり分けて書かない限り、それは論文とは認められないし、その書き方もdecisive(断定的)にやらなくては書き手の信憑性が疑われる。一方、日本語でそれをやると「傲慢ちきな」と叩かれるので、なるべく穏やかにいくように気をつけなくてはならない・・・)。バイリンガルは、こうしてふたつの文化の違いを構文の生成や文法的差異、さらにはBakerのいう単語に付随された意味などから感じ取ることが可能なわけで、それが他者に対する許容性や寛容性としてあらわれると知っても驚きではない。
もちろん、モノリンガルがこうした特長を備えられないわけではない。モノリンガルであってもすばらしい問題解決能力や発想力をもつ人たちは大勢いる。それは忘れてはならない点だが、同時に、二言語を習得するという過程でこれらの能力が開発されるという研究結果は、私には目からうろこだった。こうした点は、就職の幅が広がったり、経済的メリットがあったりする以上にはるかに魅力的な利点であると思う。
My Bilingual Child-- バイリンガルはどう作られるのか。カナダのトロントで英語話者の夫、日本語話者の私とともに育つエリックを観察しながら、バイリンガル育児の実情、さらには日本の英語教育についても考えてみよう・・・。
Monday, July 27, 2009
バイリンガルであることの利点
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