Saturday, April 30, 2011

「読み書き」を教えるのはいつ?


先日、エリックをカレッジに連れて行って用事を済まそうとしていた。オフィスで順番がくるのを待っていたら、エリックが「あ、あそこに日本語があるね」と言った。見てみると、そこはカレッジのCareer Centreで、ガラス張りの壁には世界中のさまざまな言語でCareer Centreと書かれていて、なかに「就職支援センター」の日本語があったのだった。

トロントはマルチリンガル都市なので、トロント市が発行する市民向け印刷物などには多言語表示がなされている。ある日、リサイクル・カレンダーに書かれていた多言語表示をじいっと見ていて、「これ、日本語?」と聞いたのは中国語だった。「それは中国語よ。日本はとっても昔に中国から文字を借りて日本語を作ったから、同じように見えるのよ」。

10日ほど前には、お散歩中に「あ、日本語のトラック!」という声を聞いて、見てみると中国系の食品を配達する(のであろう)トラックが走っていた。「○○食品公司」と書かれていたけど、そりゃそうだわね、日本語と中国語は似ているものね。

こんなことで、そうか、日本語の文字を認識しているのだね、と思った。子どもは文字を形として認識するというけれど、私だって例えばアラビックやらタイ語は形として認識しているから、別に子どもだけというわけではない。

そこで、ふと思うのだが、日本語の文字、「読み書き」はいつごろ教えたらよいものだろう。日本では幼稚園で基本的な読み書きを習うと聞いた。以前は小学校に入ってから読み書きをするものだったが、最近は早くなって小学校に入った時点で読み書きができないと、入学早々に「一足遅れ」を経験するのだとか。トロントでのはっきりした事情は分からないけれど、エリックの通うデイケアではアルファベットを教えている。幼稚園以前にアルファベットを教えるということに、多少違和感を覚えたけれど、子どもってCapableなのね・・・、エリックもゆっくりと覚えているようで、最近は大文字のアルファベットならば完璧とはいかないけれど、たどたどしくも読んでいる。まだ幼稚園前なので、私には早い気がするが、やはり周りの子どもを見ているとエリックの年でアルファベットを読んで書けるのは当然といった感じを受ける。

幼稚園前に文字を教えることに対して、私が「ちょっと早いのでは?」と思うのは、小学校低学年までは読み書きを教えないというウォルドルフのポリシーに共感するからではない。「教える」も「教えない」も問題があるように思うのは、そこに個人の成長の速度を考慮する余地を残していないから。これまでエリックの成長の過程で、たとえば「ことばを発する」とか「えんぴつを正しく握る」とか「はみがきができる」とか、そういったことをこちらから繰り返し言ってきたことがあるが、ある日、私がまったく教えてもない「ボタンかけ」が自分でできるようになった。それで、教えなくても時期がくれば自分でこうしたスキルは習得していくものなのだということに気付いた。子どもは実によく見ている。何度も何度も見て、「自分でやってみたい」という気持ちが生まれれば、努力をしてしようとする。それを手助けするのは大切だけれど、子どもがまだ準備ができてないうちから「させてしまう」のは無駄なことだと思うようになった。

時期が来れば子どもはある程度のことはできるようになる。そのためには、子どもが「自分でやってみたい」と思うかどうかがやっぱり大きいのだと私は思っている。親の役目はその時期を見極めることではないんだろうか。ま、海外で日本語を教えている例ではちょっと状況が違うけれど(放っておけば、日本語がまったくできなくなるという状況もありえる)、「自分でやってみたい」の気持ちを見逃さないことは何より肝心。

そういえば、偉大なByrdsも歌ってたわね。
To Everything
There is a season
And a time to every purpose, under Heaven
A time to be born, a time to die
A time to plant, a time to reap
A time to kill, a time to heal
A time to laugh, a time to weep 

東京で子育てをしていた妹曰く、「幼稚園で読み書きを教えるのは、小学校に入ったときに自分の子どもだけができないと気付いて自信を失くしたり、焦ったりするのが嫌だからだと思う。それで年々、早くなっているんだと思う」。それならば、子どもや自分を他人と比べて評価するというHabitをやめればいいと思うのだが、子どもに読み書きを教えるより、そちらの方が難しいのだろう。でも、他人と比べて自分(や子ども)を評価する、というHabitは一生ついて回って自分を苦しめることになるので、本来ならばそこを強化してあげることが、子どもの幸せにはもっと大事だという話は長くなるのでここではやめておこう。

There is a time to learn language…、今のエリックには日本語の読み書きは早いだろうと思うけれど、日本語の文字を認識している、ということは親として覚えておきたい。

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