Sunday, December 19, 2010

「No hitting/叩いてはいけない」のルールをどう教えるか

先日、3歳になったばかりのサニーのお母さんが、「かなり心配していることがあるので、ちょっと聞いて」と言ってきた。聞けば、最近のサニーは怒ったときに彼女を叩くことが多いという。それも軽く叩くというよりは、何度も何度も力を込めて叩いているらしい。サニーのお母さんは、「エリックもそういうことがある?」と聞いてきたが、もちろん、エリックも3歳4ヶ月ごろだったか、デイケアに行き始めて2ヶ月後ぐらいに夫や私を叩くことがあった。

どういうときに起こるかといえば、もう、明らかに、眠いとき、疲れすぎているとき。おひるねをしなかった日の夕方などは危険度満点だった。結局のところ、数にしてみれば10回ほどだろうか、それも軽く叩くくらいで痛くも何ともなかったけれど、私もこの時期、かなり気になった。

同じ時期、デイケアのスタッフと話をしていたときにこの話題になったことがある。彼女によれば、デイケアに行き始めた子にはよく見られるパターンらしい。子どもたちがお互いに叩いたりすることは頻繁にあるけれど、デイケアでは必ずその場でちゃんと言いきかせをする、と強調していた。実際、私も一度、2人の子どもが叩きあいになったあとで、デイケアのスタッフが仲裁に入って最後に「Sorry」を言えるまでに導いていたが、そのやり方は実にFairでEfficient、この後、私もかなり彼らのスキルに信用を置くようになった。

「やりたいのにできない」という怒り、何でもできると思いはじめたのに、ある行動を親にとめられるフラストレーションは、自分の感情がコントロールできないという不安・・・、これらは自我が健全に育っているという証拠でもある。そして、この時期、親がどう子どもを導いていくかは、今後、子どもにどんな行動基準を与えるか、という点で非常に大切な時期だと思う。

さて、我が家で私と夫がやったのは、
・We don’t hit people、We don’t tolerate hitting、It is not OK to hit peopleと繰り返し伝える
・あやまるように言う
・今、感じているのはどういう感情なのかを言葉で伝えるよう促す
・そういうときは必ずといっていいほど泣くので、泣き止むまでTime Outとする(そのとき、泣き止んだら夫か私が部屋に入って話をする、と伝える)
・泣き止んだら部屋に入って、同じようにどうしてHittingがよくないか、どういう感情を感じていたのか、を話す
・最後に「ごめんね」かSorryを言う。そのときは「ごめんねは2度と同じことをやらないという意味」と強調する

という方法。とにかく、泣いているときは話にならないので、泣き止むのを待って、それから話に入る。何度か同じことを繰り返すうちに、エリックの方も泣き止むと私たちが来てくれると理解して、泣き止むのも早くなってきた。

また、この時期の子どもに感情をことばで表現する、ということを教えるベネフィットは計り知れない。体のなかにフラストレーションや怒りを感じて、それをどう処理していいか分からない子どもは、その不安感から、ものを投げたりぶつけたり、他人を噛んだり叩いたりしてしまう。でも、一度、自分の感じているのが何なのかをことばでCognitiveに認識すれば、怒りはおさまらなくても、不安は取り除ける。しばらくすると、エリックはI am angryとかI am frustratedとか、感情をことばに表現することが増えて、叩くということがほとんどなくなった。

実は、これは私が夫から学んだことで、夫の対応を繰り返し見るうちに、そして、その結果としてあらわれたエリックの変化を見て、「感情にことばを与える」の重要性を改めて認識するようになった。

親の対応として重要な点は、
・夫と私が同じ行動に対して、同じ対応をすること
・その場できちんと対応すること
・「ごめんね」の重要性をわからせること(ちゃんと相手の目を見て謝る)

という点。サニーのお母さんに「まわりの大人が同じ対応をしているか」と聞いたとき、彼女は「実はおじいちゃんはすぐにサニーを抱きかかえて連れていってしまう」と言っていた。子どもは大人の対応によって、自分がしてもいいとされている行動パターンを学びとっている。その時期に大人たちの対応が違うのを目の当たりにすると、困惑するだけで、行動を変える契機にはならない。

その場で対応する必要性は、この時期の子どものAttention Spanの短さを見ていると明らかだろう。

最後の「ごめんね」の重要性は、私が学校で子どもたちを教えていたときに経験したことなのだが、「ごめんね」という時に他のことを考えながら言うのではなく、心から反省し、2度とやらないと約束できるように子どもたちを導くことは、その後の学級の雰囲気を大きく変えた。子どものうちは、間違いをおかすことはそれほど重要ではないけれど、それを2度と繰り返さないように自分の行動パターンを変えられるかどうか、が重要なのだと、私は子どもたちに再度言い聞かせてきた。その結果、「ごめんね」の意味をしっかり考えさせることができたのだと思う。同じように、エリックが「ごめんね」と言うときには、そのことばが何を意味するかを知らせておきたいと思っている。(余談になるが、私は常々、日本語の「ごめんね」とか「すみません」は英語のSorryに比べると、重みが断然軽いと思っている。)

この時期の子どもたちは、いってみればCave man(洞穴に住む人)からSocial being(社会的存在)へと変化をとげつつあるわけで、社会のルールを学びつつある時期にあたる。厄介な時期ではあるけれど、2ヶ月ほどで、叩くこともほとんどなくなったエリックを見ると、子どもたちのCapabilityに驚くとともに、今後、ちゃんと社会で生きていける術を学ばせてあげるのは親の大切な役目なのだとつくづく思う。

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