Monday, August 17, 2009

年齢に応じた語りかけと「ジャンプアップ」

ここ最近、私と夫がディナーのときに、あるいは車のなかで話をしていたりすると、エリックが何やら言って、それを放って夫との話に興じていると、突然、「マミイ!!」と大きな声を出すようになっている。その口調はまさに「話をしているんだから、こっちにも注意を向けて!」と言っているような…。

エリックが話したいのは分かる。最近は私たちの会話も何となく理解しているようで、今日も「Hothead(すぐに頭に血が上る短気な人)」という言葉を聞いて、私の頭に触れながら「あち(あつい)」と言ったりしている。だから、自分も会話に入れないのがちょっと悔しいのかもしれない。

エリックが生まれてから、私は他の母親たちが子どもによく話をするのを見ながら、感心してきたものだ。「ほら、マミーは今、靴のひもを結んでいますよ。右から始めて、今度は左。さあ、できた」とか、まるで実況中継をしているかのように、手も口も同時に動かしている母親たちが、私には驚異に感じられた。私は頭のなかでいろんなことを考えていて、その頭のなかの考えに忙しくて、エリックに話しかけるのにはかなり意識的な努力が必要だったし、今もそうである。

しかし、ここで告白するが、私にはエリックのレベルの会話がたまに退屈に感じられることがあって、それは、エリックの知っている単語が限られていること、概念的なことは説明できないことなどが理由で、私は無意識のうちに自分の頭のなかの世界(より多くの概念やらアイデアやらが詰まっている)に入っていくのだと思う。

シャーリー(パブリックナース)にも「何でもいいから話しかけていっぱいインプットをしてあげることが、言語上達の秘訣」と言われてきた。入ってこなくては、言葉は覚えられないわけだし、それをしてあげられるのは、四六時中一緒にいる私だということもよく分かっているのだが…。

言語習得の過程では、年齢に応じた語りかけが大切であるが、私たちは意識しなくても自然と1歳児には、1歳児に見合う、4歳児には4歳児に見合う語りかけを自然としているという研究結果を読んだことがある。たとえば、1歳児に「You should not hit the table」とは言わずかわりに「No hit!」と言うし、私もそうやって簡潔な日本語を話している自分に気付くことがあった。

付け加えると、英語圏の子ども向け絵本の古典となっている「ピーターラビット」が素晴らしいとされる理由のひとつは、単純な話で明快な文章で書かれているのもかかわらず、ところどころにレベル的に突如としてジャンプアップしたような単語(たとえばimploreなんて言葉)が入っていることである。こうしたちょっぴり聞きなれない単語を目にした子どもたちは、何だろうと思うし、話の文脈から予測することもできる。それが、言語学習の幅を広げてくれるのだという。確かに、知っているだけの単語を読んでいるだけでは新しい単語やその概念を知ることはできない。言語学習には、ピーターラビットが示すような「ジャンプアップ」が必要なわけで、子どもたちの言語習得能力は現在のレベルとちょっぴり上のレベルとのギャップをうめることで向上するというわけである

私もエリックの知っている言葉だけを選んで話していないで、意識的に新しい単語や概念を紹介しながら、エリックの世界を広げていく必要がある、ということね…。

気が早い私は、今からエリックと政治や歴史の問題を日本語で語れる日を心待ちにしている…。

No comments:

Post a Comment