なかや みわ さく・え(福音館書店) 3才~小学校初頭むき |
そらまめくんがお気に入りのベッドは「くものように ふわふわで、わたのように やわらかい」(実際のそらまめの鞘がそうであるように)。それをちょっとだけ貸してちょうだい、というお友達のお願いに応えず、ひとりで楽しんでいるそらまめくん。
でも、ある日、ベッドがなくなってしまう。そらまめくんは必死に探すのだけれど、見当たらない。最初は「ばつ」だと思っていた友達も、だんだんかわいそうになってきて自分たちのベッドを貸してあげようとするが、どれもこれもそらまめくんの体型にはあわない。
探し疲れへとへとになったそらまめくんは、とうとう自分のベッドを見つけるのだが、それは大きなうずらの下敷きになっていた。よく見ると、うずらがふわふわベッドのうえで卵を温めているようなのだ。そらまめくんはしばらく近くで待ってみることにする。そうして待っているうちに卵がどうなるのか興味津々になっていく。
そんなある日、卵がかえって、ひなが生まれた。それを見たそらまめくんは自分のことのように大喜び。ひなを連れて去っていくおかあさんうずらは、無言でそらまめくんに感謝の気持ちを伝える。
ベッドが戻って喜ぶそらまめくんは、お友達といっしょにお祭りをする。そのあとは、もちろん、ふわふわのベッドでみんないっしょにおやすみ・・・。
単純な話だけれど、そらまめくんや友達の喜怒哀楽がこちらにも伝わってくるようで、非常に感情的に入りやすい本だと思う。読んでいて、何よりすがすがしい。この年代の子どもたちが学んでいる「シェアすること」と「シェアしたときのよろこび」をやさしく語りかけてくれる。
それに、絵もほんわかとしていて、そらまめくんのベッドは本当に気持ちよさそうに描かれていて、エリックも自分のふとんをそらまめくんのベッドにしようといろいろ工夫したりしている。そらまめくんやお友達の表情もとてもいい。
ところで、おかあさんうずらとひよこたちがベッドを後にして歩いていくときのシーンは次のようになっている。
・・・ひよこたちは ベッドから でて、おかあさんうずらのうしろを ひょこ ひょこと あるいていきます。
「げんきでね」
そらまめくんが てを ふると、おかあさんうずらは ふりかえって、そらまめくんを じっと みつめました。・・・
エリックに「どうしておかあさんうずらは、そらまめくんをじっとみつめたんだろうね」と聞くと、即座に「I think she wanted to say thank you to そらまめくん」という答えが返ってきた。文章にはどこにもそれ(おかあさんうずらが感謝していること)は書かれていない。エリックはその行間を読み取ることのできる年齢に達しているんだとこのとき初めて実感した。
ここから、言語能力で大切な文章読解や感情の機微を読み取る、というスキルが育っていくのだが、5歳でもうその萌芽が観察できることに気付いて少々驚いてしまった。これでついつい忘れがちな事実、つまり、エリックはまだ言語習得の分野ではcritical periodにいるのだ、ということを改めて思い出したのだった。
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