Monday, July 19, 2010

The Life of the Brain Series 2. First Words (Toronto Star, July 17, 2010)

ノーム・チョムスキーが50年以上前に提案したLAD(Language Acquisition Device,人間の脳には言語を習得する以前、生得的に言語習得の機能が備わっている)という考え方は、今のような先端技術を使った実験によって導き出されたわけではなかった。それが、最近の心理学分野の実験で、科学的に裏付けられている、という記事を読んだ。 (The Life of the Brain: How children learn language, Toronto Star, July 17, 2010 http://www.thestar.com/mobile/news/article/837019
この特集記事は長いし、専門用語が多くて難しいのだけれど、バイリンガルに関する箇所は興味深いのでこの部分だけ概略してみる。

・生後6ヶ月の赤ちゃんには世界のあらゆる言語に特有な音声を聞き分けることができる能力が備わっている
・生後6ヶ月から1年にかけて、この能力は低下するが、一方では音声学のわずかな変化を聞き分けられる能力が備わる。子どもの言語能力がこの時期、飛躍的に伸びるのはこのため
・一方、バイリンガル環境で育つ子どもの場合、6ヶ月時期に見られた多様な言語にみられる音素の認識能力は閉じることはない
・バイリンガル環境で育つ赤ちゃんは、ユニリンガルの赤ちゃんに比べてより語彙発達がいちじるしい。従って、実際には早期バイリンガリズムは、子どもたちの将来に利益、とりわけ音韻論(phonology: ある言語の言語音を音素という単位に抽出して、その構造や体系を記述したり、また文や単語を具体的な音声に変換するのに必要な規則を見つけだす)の認識が必須となる読解力の場面で多大な利益を与える
・アメリカ貧困層地域でバイリンガル環境で育った子どもたちは、国内で最も裕福なエリアで育ったユニリンガルの子どもたちと同程度の読解力を持っていることが調査により判明した

この研究はトロント大学のDr. Laura-Ann Petittoによってなされており、彼女の調査領域は認知神経科学。何かのマガジンか何かで以前、「生後6ヶ月までは、どの赤ちゃんでもたとえばRとLが聞き分けられるが、それ以降、たとえば日本人の子どもはこの両者が区別できなくなる」というのを読んだことがある。ほーっと思ったけれど、上の研究を読むと、このステイトメントは正確には「日本人の子ども」ではなくて「日本語環境で育っている子ども」というのが正しいらしい。

何はともあれ、発達心理学でも言語学でも、最近の研究結果は「バイリンガル環境で育つ=アドバンテージ」という方向を指していて、バイリンガルで育てている親にとってはこの上ないサポートであると感じられる。

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